簿記Q&A「減価償却費の計算で使う年数は誰が決めているんですか?」
はじめまして、まいどどうも、簿記せんせーのひなたまです。
以前、簿記についての質問を募集したところ、なんと1週間でゼロ件のご質問がございました。
なので、今回は脳内からお越しのイマジナリー美少女(セミロング眼鏡っ娘で引っ込み思案かつ内気だけど親友のことになるとなぜか一生懸命になっちゃってあれ?女友達なのになんなのこの気持ちもしかして恋?けどそんなの以下略)をお招きして、彼女の質問に応えたいと思います。
ええ、せんせーは百合が大好きです。
では、さっそく質問を聞いてみましょう!
<質問>
「減価償却の勉強をしているとき、『この建物の耐用年数は5年である』というような問題文が出てきました。この5年とかの耐用年数は誰が決めているんですか?てか、5年しか持たない建物ってなんですか?とんだ欠陥住宅だな笑わせるぜHAHAHA!」
<解答>
えー、最後のあたりは無視して、お答えします。
耐用年数は誰が決めるのかというご質問ですが、この答えは、「企業が各自で決める」です。
この耐用年数は、「通常の補修を行いながらの使用により、使用の効果を上げることのできる期間」で、
将来の使用計画などから、企業が各自で見積もります。
解答は以上になります。
「おいおいそりゃないぜ、ジョニー。減価償却費がいくらになるかは耐用年数で変わるだろ?」
そうですね、耐用年数が変わると費用額も変わります。ジョニーではありませんが。
たとえば、1億2,000万円の機械が、残存価額ゼロで耐用年数5年だと、1年間で2,400万円の減価償却費になります。
この耐用年数を4年にすれば費用3,000万円と、費用が600万円増加した分、利益を減らせます。
一方、耐用年数を6年にすれば費用は2,000万円になり、その分だけ利益をよく見せることができます。
「畜生、そんな年数を企業が決めるなんて認めていいのか!? そんなの、ボクは認めないッ! 利益操作が……利益操作が、簡単にできちまうだろッ!」
はい、利益操作ができてしまいま――落ち着いてください暴れないでください。
「不正を、ボクは不正を許せないんだッ! 喰らえッ正義執行ッ!」
大丈夫殴らないでください大丈夫、そんな簡単に利益操作は通じませんので。
(やる経理担当者いますけど金融機関等、ある程度の知識のある人間からはバレバレです)
(銀行などの金融機関では自動で金額を修正して、本来の利益を割り出すシステムもあります)
(というわけで、まあ簡単には利益操作はできないのですね。「簡単には」ですが)
まず、「減価償却費を大きく計上して利益を減らすことで、税金も減らす」という脱税行為は不可能です。
実のところ、税務上の計算においては、減価償却における耐用年数や減価償却方法が細かく定められています。
会計上では、企業各自の計算で減価償却費を計算できますが、費用を大きした場合は税額の計算で修正が求められます。
ちなみに、耐用年数については、国税庁のホームページで確認できるので、一度見るとイメージがわきやすいかと。
(生物にまで耐用年数があったりします)
こちらは「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」
次に、「減価償却費を小さく計上して利益額を大きくし、経営成績をよく見せる」という手法もまた困難になっています。
会計のルールに、「継続性の原則」というものがあります。
「一度決めた処理のルールは、正当な理由がないかぎり変えることができない」というものです。
なので、今年は赤字だから減価償却費を少なめにして黒字にしよう、なんてことはできないわけです。
実際のところ、減価償却費は「国税庁が決めた方法のままで行う」のがほとんどです。
税法上と異なる計算を行えば、修正のための計算が必要となってコストが増加します。
そのため、それぞれの計算を行うのは、厳密な計算が求められる上場企業や独自性の強い業界ぐらいです。
そういった企業は、「合理的な説明ができる耐用年数や方法」によって減価償却を行います。
そして、もし一般的な会計処理と異なる方法を取れば、すぐにチェックを受けます。
「利益をよく見せて株価を上げよう」なんて上場会社は公認会計士から例外処理の理由を問われますし、
「黒字経営に見せかけてお金を借りよう」などと操作しても銀行から見れば丸分かりなわけです。
というわけで、耐用年数を変更することで利益を操作するのは難しいわけです。
「利益操作、できねえのかよッ畜生ッ!」
正義の味方か悪の手先か、設定ハッキリしてください。